生き物文化誌 BIOSTORY 刊行に際して
秋道 智彌 Tomoya Akimichi (ビオストーリー編集長)

 「生き物文化誌学会」が設立された。新しい学問の構築に向けて、その活動の核となる雑誌は「BIOSTORY」と決まった。BIOは、ギリシア語のbios(生命)に由来する。BIOをそのまま読めばバイオとなるが、この学会ではビオと読みたい。ビオストーリーは、「生き物の物語」を意味する新しいメッセージである。

  この地球上で、人間も生き物の一員である。人間は、ほかの生き物との相互作用を通じてじつにさまざまな物語を生み出してきた。個々の物語には、生き物をめぐる豊かな知恵と技術、芸術や信仰が登場する。その総体を文化と呼ぶならば、ビオストーリーは、時代や地域ごとに形成されてきた多様な生き物の文化を明らかにすることに通じる。

  不幸なことに、21世紀初頭の現代、生き物と人間の関わりにはある種の危機的状況が顕在化している。野生の生き物の絶滅や生息地の劣化、先住民の文化の衰退や言語の消滅などが端的な例だ。このまま人間と生き物はどうなっていくのか、不安材料が山積している。だが推して知るべしは、この先の物語に良くも悪くもその筋道をつけるのは、ほかならぬわれわれ人間であるという自覚である。未来は明るいに越したことはない。今後、夢のある物語をつくっていくためにも、生き物との繋がりについて熱く語り、その輪をひろげていく場を築いていきたい。その舞台では、かならずしも主役にならずともよい。むしろ名脇役に徹しようではないか。もちろん日本や世界中の、さまざま生き物に登場願おう。妖怪だってかまわない。

ビオストーリーの幕は開いた。人と生き物の新しい物語がこれからはじまるのだ。